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★もう一度現れて欲しい ②。
 
優姫覚醒後のお話 完結編です。


「零が ずっと欲しかった・・」


しっとりしっとりなので本当にご注意ください。

あ。
拍手ぽちぽち下さった方々 
ありがとうございます。



 


 

その日以降どんなに願っても夢の中に零の姿は現れなくなった。


そして
したためている手紙の量は更に増えていく。
キヲクと言うキヲクの断片をなぞる様に 寝る時間も書き留め続ける優姫がいた。





『お前 大丈夫か?』

『何がですか?』


優姫は横で眉を寄せている藍堂に顔を向けずに返事を返した。
藍堂には勉強を教えて貰っているがあまり画期的な成果は出ていない。
優姫は藍堂の方に顔を向けた。


『また間違ってますか?』

『違う。そうじゃない・・
気付いていないのか?』


『だから何がですか?』


優姫は首を傾げた。


顔が凍りついてる様に表情がなく 顔色も血色が悪い。


(寝ていないんじゃないのか?)


以前の優姫は表情がころころ変わり明るい空気を纏っていた奴だった。

確かに吸血鬼に覚醒してからは雰囲気も少し変わったが最近の優姫は目に見えて可笑しい感じだ。



(枢様が屋敷を空けている期間が長くて良かった)


藍堂は溜息を吐く。


(こんな黒主優姫を見たら何を思うか・・・)


『お前 ちゃんと寝れてるのか?』


優姫はビクリと身体を強張らせた。
顔を机に向ける。


『寝れてますよ。ちゃんと。』


藍堂はそう言う優姫をじっと見つめていたがすぐに手元の本に目を落とした。


『・・・・・そうか』

『・・・・』


優姫はペンをぎゅっと握り返した。


本当は寝れてなどいない。

夢の零に拒絶され 逢えなくなってからは眠れなくなった。
キヲクの中の零をただひたすら紙上で辿る事でしか自分を保つ事が出来なかったから。

でもどうやら藍堂に心配をかけてしまったようだ。
自分はそんなに酷い顔をしているのか。


『・・藍堂先輩は 夢を見ますか?』

『へ?』


唐突な質問に藍堂は間抜けな声を出す。
優姫は窓の外を眺めながらぽつりと零す。


『確実に見たいと思う夢は どうしたら見れるんでしょうね』

『・・何を言ってるんだ?』


藍堂は訳がわからないと眉をしかめた。
優姫はそんな藍堂を見て苦笑いを浮かべる。


『怖いのかもしれません。
 寝る事が。』


『・・・・』



--拒絶が。


優姫はそっと目を伏せた。


(逢えない事が。)


--夢の中でさえも。



『私 変な事言ってますね』


藍堂にささやかな微笑みを向け 優姫は腕に光るブレスをそっと撫でた。




















”お前は 俺を残酷な目に合わせる権利がある”


(そんな事望んでない)


もう一人の自分の声が後ろから響いてきた。
優姫は夢の中で目を醒ます。


周りは霧が立ち込める様な視界の悪さだ。

零に言われた言葉。
また夢に響いてきた言葉。


『零?』



”残った命全部 お前の為に使わされたって文句なんかないんだ”


---違うよ そうじゃなくて。

何かに犠牲になるんじゃなくて・・・


零の幸せを考えて欲しい。


でも本当は-----



(零と一緒に歩んで行く幸せはどうしても叶わないの?)


もう一人が流す言葉は夢でしか明かせないヲモイ。
純血種だった自分では零の側にはいられないから・・・


優姫は零の姿を求め周りを見渡した。
視界はぼやけたまま。

それでも何か違う気配を感じ 目を凝らして再度世界を見渡してみる。
一点だけ奥の方で何かが煌めいた気がした。

優姫は立ち上がりその先に歩を進める。
地面がくにゃくにゃ揺れて歩き難い。
足を取られふらついてしまう。


何かに拒まれているかのように揺れは激しくなり優姫は遂に立っていられなくなり地面に両手を着いた。
拍子に手も地面に飲み込まれる様だった。
急いで地面から右手を抜く。

瞬間 手首に光るブレスが音を起てると面白い様に視界が晴れた。

優姫は思わずブレスに目を遣る。


(零?)


優姫はブレスを触ると再度ブレスの音を震わせた。
地面の揺れが収まる。

優姫は再び奥の煌めきを探し歩を進めた。




煌めきを辿って行くと奥の隅の隅に身体を縮こまらせ、片脚を投げ出して座る人影らしきものを見つけた。
優姫は自分の胸が跳ねるのを感じた。


(零だ。)


喜びが溢れる。
やっと見つけた。


『零ッ・・・』


優姫は駆け寄り声を掛けるが零はその声にも反応せず 身体はピクリとも動かなかった。
その瞳も揺れる事なく、何も映してはいない。
ただ前方を眺めているだけ。

人形のようだった。



"モウダレモ オレニ チカヅクナ"




夢の中で発せられた拒絶の言葉を思い出す。
夢ではあるけれど 現実である様な気がして苦しい。
誰も寄せつけようとしない零に心が張り裂けそうだ。

優姫はそっと膝を折り零の頭に自分の顔を埋める。


『零・・零・・』


何度も名を呼んだ。
呼べば近くに居る事が出来る気がした。


『ごめんね--』


夢の中の零でさえも求めて止められない。
拒まれても触れられずにはいられない。


『踏み込んでごめんね』


その首筋に吸い込まれるように。
零の首の刺青が目に入り愛おしむ様に指で何度もなぞる。


(欲しい よ)


なんて浅ましい。
吸血鬼とはそういうものなのだと全身で感じる欲望。



(零が欲しいよ)



優姫は吸い込まれるように唇を寄せ
その刺青にキスを落とす。


零の香がした。


零の身体がピクリと僅かに揺れる。

優姫の瞳が燃え上がり吸血鬼の持つ紅色に染まった。


優姫は夢の中の零の首筋に
迷う事なく牙を立てる。


「ガリッ」


"はッ・・"


その行為に零は身体を弾けさせて吐息をはいた。
首に纏わり付く様に優姫は身体を寄せて零の血を奪う。
優姫の背中にそろり。零の腕が伸びた。


「ジュ・・ジュル」


浅ましい音が響く。
甘くとろける香りが辺りに広がった。


満たされる---


渇きが潤っていくのがわかる。


(夢だと言うのに)


零で一杯になるのがわかる。
優姫は更に強く零を求めた。

そんな優姫の腕を零はゆっくりと掴む。
手首のブレスが揺れた。



『ゆ  うき・・』



掠れた声が優姫の耳に届いた。
優姫は零の首筋から離れ、その顔を見る。
薄紫の瞳はうっすら朱く色付き大きく揺れていた。


(やっと呼んでくれた・・)


涙が流れた。


『優・・姫』


零の声が浸透していく。
視線が交わる。


『声・・ずっと聞きたかったよ』


この世界に居る時には頑なに聞こえなかった零の声に優姫の心が震えた。


『逢いたかったよ・・零』


くしゃり笑顔を浮かべる頬に幾度となく雫がこぼれた。
零は暫く優姫の顔を見つめていたが、そろそろと腕を伸ばし頬を伝う涙を拭い取った。


『優 姫・・?』

『零ッ』


優姫は思わず零に抱き着き、首筋に唇を落とす。


『零が・・』


『零が ずっと欲しかった・・
もう一度・・私を求めて欲しかった・・・』


優姫が囁くと零は弾けた様に優姫を抱きしめる。
そのまま優姫の首筋に舌を這わせた。


『ンッ・・』


優姫の口から甘い息が漏れる。


『ぜ・・ろ・・』

『優姫ッ・・』


貪る様にお互いの血を求め、お互いの名を呼び
何度も何度も熱く深い口づけを交わした。
とめどなく涙が溢れ止まらなかった。


(きっとこの先もずっとヲモウ人。
忘れられない人・・・)


夢でも良いから逢いたいと望む人---


(逢いたい)


(逢いたいよ)


優姫は零と抱き合いながら噛み締める様に心にヲモイを刻む。
抑え切れないヲモイは言葉になって優姫の口から溢れ出た。


『零に逢いたい』


瞬間 零は優姫から身体を離した。
目を見開き驚いた顔。
優姫は零の頬に手を伸ばして愛おしそうに優しく触れた。


『夢なんかじゃなくて。
こんな所じゃなくて 零に触れていたい。』


(夢でしか伝えられなくても)



優姫は涙を流しながらクシャリ笑顔を零に向けた。


『零の事 ずっと・・・』


零は頬に触れた優姫の手に自分の手を重ねる。


"シャリ"


優姫のブレスが揺れて鳴った。


夢でなら
夢でしか
夢であっても---


(何て虚しくて不毛なネガイ。)


何処かで静かに鐘の音が聞こえた気がした。
優姫は静かに瞳を閉じる。


『零・・私 本当は零と・・・』


『俺 は---』


弾けるように光を放ち 消える間際に零の声が聞こえたが瞳を開ける事も叶わず。
遠くで響く鐘の音と共に世界は終わりを告げた。

























優姫は涙を流しながら 霞みの世界から目を覚ました。

嬉しくて 淋しくて
入り乱れた感情のまま また泣いた。



(私は強くならなくてはいけない)


優姫は一人ベッドの上で、零との絆を胸に秘め涙を拭う。


---もう一度
--貴方に・・・


















『ぜ・ろ・・』


光を放つ視界の向こうで自分を呼ぶ声が聞こえる。

(優姫)


『ぜ ろ く・・』


(待て!)



『優姫!!』


視界が晴れ、必死に掴んだ手の中には優姫の姿はなく
目の前に飛び込んで来たのは若葉沙頼の驚いた顔だった。


『・・わ・かば?』


沙頼はいきなり捕まれた腕に目を遣りながら 再び零に顔を向ける。
零はあまりの事に理解出来ていない様子だった。
眉間の皺が深く刻まれた。


『優姫じゃなくてごめんなさい。
あと勝手に部屋に入った事も・・・』


『・・はッ・・何・・どうなって・・』


零は顔を手で覆う。
さっきまで腕の中に優姫がいた気がした。
呼吸が乱れて息が苦しい。


『それと出来れば腕を離して欲しいのだけど。』


零は ハッとして掴んだままだった沙頼の腕を解放した。
沙頼は零に解放された腕を摩ると零が寝ているベッドから離れた。


『もう何日も眠ったままだったのよ。
夜刈理事長代理に許可を取って来てみたら死んだ様に眠ったまま起きなくて。
お医者さまに診て貰ったりしたのだけど原因はわからないし。』


零は 沙頼の話を聞いているのかいないのか
頭をクシャリ掴み俯いたまま動かなかった。


『健康体だと言うし・・・
意識的にこちらを拒んでいる様で。』


零はゆっくりと顔を上げ 沙頼の顔を見た。


『もう捨ててしまったのかと思ったわ』


零は顔を歪め再び視線をベッドの上に落とす。
沙頼は小さく溜息を吐いた。


『でも良かったわ。戻ってくれて。
あの子が悲しむもの・・・』


零は沙頼の言葉を聞くとそのまま動かなくなった。


(俺は何をしていた?)


零は首筋の刺青に手を遣る。
感触が 息遣いが ヲモイが
まだそこに残っているようだった。

夢ではなくまた俺に逢いたいと
涙に濡れた瞳を向けて俺を見るアイツに
とてつもなく引き寄せられた。


(俺は一体何を・・・)


零は顔を歪める。
沙頼は暫く零の様子を見守っていたが椅子に置いてあったコートを手に取った。
零が目を覚ました事を夜刈理事長代理に報告しなくては。

零がぽつりと口を開いた。


『アイツは』 


『・・まだ居るのか・・
変わらないのか・・
それとも 俺 が・・・』


無意識に呟いているそれは答えを求めるものではなく
独り言がついて出たかの様だったけれど。

それでも何かに囚われて前に進めないでいるのであろう彼と
恐らく自分に言い聞かせるかの様に沙頼は静かに言葉を紡ぐ。


『それでも・・変わってしまったとしても。
私には関係ないわ。
私にとってあの子が大切な人だと言う事に変わりはないもの・・・』


零は ハッとしてその言葉に息を呑む。


『きっと零くんにとっても。』


沙頼はその顔を見ると ふわりと笑顔を向ける。
沙頼はバックを掴むと財布を取り出した。


『何か食べた方が良いわ。
食材 買ってくるわね。』

そう言うと部屋を後にした。



一人になった部屋で零は静かに想いを整理する。


夢--を見ていたんだと思う。


朧げだが
世界を・・ アイツを拒んだ夢。

けれど
アイツを拒む事が出来なかった夢。


(いくら拒絶しても結局俺はアイツを求めるのか)


もう側にいる事は叶わないけれど

その行いに
アイツの言葉に
さ迷う魂が覚醒していくのを感じた。


お互いを求めて血を貪り合う
吸血鬼であると言う事の証明である行為。


零は はっ。と自嘲気味な笑いを吐く。


(どこまで強欲なんだ 俺は---)


夢の中での都合の良い出来事に
自らが望んで見せたのであろうと自分を恥じた。


(アイツが俺の血を求めるなんて
有り得ないだろ・・)


それでも夢の中でさえも無意識に求めてしまう光。


霞みに揺れる世界に堕ちても
闇に喰われそうになっていても
いつでも一瞬で晴れさせてしまう太陽の様な光。


零は光を閉ざす様に瞳を閉じた。


本当はわかっている。
求めるこの感情は何なのか。


(でもそれは閉まっておこう---)


必要がない感情だ
あっても仕方がない感情・・・

捨てる事は出来なくても
でも 奥に隠しておく事は出来る筈だ。


夢だけで
それだけで良い。



"夢の中じゃなくて 零に逢いたい"


揺れる瞳に目が離せなかった。
あの瞬間だけは俺のものだった。


(俺は---

幻想が放ったあの一瞬 それだけで良い。)



零は 閉じた瞳を開いた。
決別するかの様にその瞳が放つ光には 太陽の光は宿っていなかった。

それ以降 零は夢の世界で優姫に逢う事はなく---




そして

暫くしたのち

この場所を訪れる黒主灰閻に
零は一年振りに会う事になる。






"夢の中じゃなく・・・零に

--もう一度 逢いたい"



微かなヲモイは現実となって。


























20100114
-----------》》
終わっ
終わったのか??
(゜Д゜;≡;゜д゜)

えーと言い訳のしようがありません!!

敗因は本編とシンクロし過ぎた
って事でしょうか・・・

この後の夜会での零と優姫の再会直後については全くわからないので
どうなんだろう
繋がりますかね・・・


えーと
Bさんの
『夢の中で逢いましょう』
を元に作成させていただきました

零優曲~!!!

と言い続けて何回聞いたかわかりません
フレーズも密かに盛り込み タイトルも使ってしまいました

絶対使いたいフレーズはいくつもあったんですが物語上ムリなのもあって残念でした


とりあえず書きたかったのは優姫の零への吸血。⑦ですね
零を求めて求めて止まないみたいな?


やぱり優姫→零はロマン。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!!

拍手

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