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★銀とオレンジ①。
零せんせい 出会い編です。

パラレルなので取説「零せんせいの件」も
確認してください。
(でも大した説明を書いてない・・・)





黒主学園の理事をしている黒主灰閻のもとに何年か振りにかつての恩師から連絡が入ったのは1ヶ月程前。

『黒主くんの学園でうちの息子を預かって貰えないだろうか』

『は?』


懐かしむ挨拶も早々に
唐突に切り出された用件に 思わず間抜けな声を出してしまった。

確か一度だけ会った事があった筈だが・・
まだ小学生位だった少年の姿を頭の隅に思い浮かべる。

『17歳なんだが既に高校課程を修了してしまっていてね。
僕の元で考古学の方を学び始めているんだ。
だからその・・学校の方には通っていなくてね・・』

『17歳でですか。
それはとても優秀でいらっしゃいますね』

『いやしかし・・この年頃の子は勉学だけではなく人との繋がりを大切にするだろう?
僕はそうあるべきだと考えているんだが・・・』

電話口で一瞬言い淀む恩師の次の言葉を待つ。

『あの子は人に対しての執着が希薄過ぎて・・その・・
心配なんだ』

(なるほど・・)

先程片隅に浮かべた少年の火のない瞳を思い出した。

『しかしご子息はそれを?』

『僕が勝手に言い出した事ではあるけれど是非お願いしたい』

『しかし・・・』

『勉強などいつでも出来るのだから』

瞬間自分の娘の顔が浮かぶ。

『本人の意思を尊重するべきだと考えるので無理に と言うのは承諾出来兼ねますね。
しかし折角僕を頼って戴いたのですから・・』 

一呼吸置くと

『こう言うのはどうでしょうか教授・・・・』











 
『家庭教師を頼む事になったからね』

灰閻はココアをテーブルに置くと笑顔で優姫にそう伝えた。

『えー!!!』

義父である灰閻にいきなり家庭教師宣言をされた優姫は
あまりにも突然の事に食べていたパンを皿の上に落としてしまった。

『な 何で急に?!』

『優姫の為に言ってるんだよー。
このままだと優姫は
あの…アレだから…。
来年は中学生だしね。』

『アレって何よー。
お馬鹿とでも言いたいのー?』

ぶー と口を尖らせると顔を反らす。

『そうだねー。
そうなり兼ねないねー。
まぁ優姫の成績だけの事じゃないんだけど・・』

灰閻は 何とも言えない表情をさせ ニコリと笑みを浮かべた。

恩師に提案したのは我が娘への家庭教師。
優姫との触れ合いで良い方向に向かえばと
言わばリハビリ的な案だが
その先に学校へ通う気になれば編入手続きを取ると言うものだった。
どうやら納得を得た様で今日こちらに着く事になっている。

『そんな訳だから
今日から一緒に家庭教師の先生も此処で暮らす事になるからね』

『!!!』

今度は声にはならず
ただひたすら口をパクパクさせるだけしか出来なかった。
優姫の拒否権はもとより無いらしい。








 
学校から帰ってくると リビングには既に見知らぬ人物が居て灰閻と話しをしているようだった。

『あ 優姫お帰りー』

『た ただいま・・』

例の家庭教師だと思うと優姫は思わずドアに隠れてしまう。

『優姫 彼が今日からお世話になる家庭教師の先生だよ。』

そう紹介され
こちらに振り向いた人物を見て優姫は一瞬息を飲んで固まってしまった。

綺麗な銀髪に窓から入る夕日のオレンジがキラキラと跳ね
その髪の下から覗く薄紫色の憂いを纏った瞳に惹き込まれそうになったから。

(綺麗・・・)


『錐生零です。
よろしく・・』

そう言って会釈をする彼をただただ見つめるだけで動けなかった。


『錐生くんはね僕の恩師のご子息なんだよ。
今、高校生…位だったかな?』

零はコクリ。と頷きジッと動かないで自分を見ている優姫の方をチラリと見た。

『とても優秀でね…優姫?
どうしたの?』

灰閻はドアの所にへばり付いている優姫の所まで来ると固まっている優姫の顔に手を向けヒラヒラと振った。
優姫はハッとして灰閻の洋服にしがみつき後ろに隠れる。


『・・・・優姫?』

『・・・・』

『うーん。慣れるまでは仕方ないかなー。』

灰閻は後ろに隠れて縮こまっている優姫の頭をポンポンと撫でながら零の方を見てにこりと微笑んだ。









 
優姫が学校から帰ると大体リビングのソファで零は難しい分厚い本を読んでいた。

リビングのドアのガラスから優姫は零の様子を毎日覗いていたが
何だか話し掛けてはいけない気がしてそのまま自分の部屋に入ってしまう日が何日か続いていた。

その日も学校から帰るとすぐにリビングの零の様子をドアから覗いたがソファに座る姿は見当たらなかった。

(あれ?いない)

優姫はドアを開けてリビングに入ってみた。
ソファに近付くと隠れて見えなかったがテーブルの上には本が山積みで
ソファを覗くと零が横になって眠っていた。

出会ったあの日と同じように零の髪は窓から洩れる夕日のオレンジに染まりキラキラと輝いていた。


『やっぱり綺麗・・』

優姫は無意識に零の髪を掬う。
サラリと銀色が揺れた。


『・・る』

優姫はビクリと零の髪から手を離した。
眠る零の眉間にはみるみる皺が寄せられていく。

(怖い夢でも見てるのかな・・)

優姫は零の頭を優しく何回も撫でた。
零の首元の汗が光る。


『・・壱縷ッ!!』


零は ハッとして頭を撫でていた優姫の手を強く握り取った。


『!!!』

『・・・あ?・・え。』


零はまどろみからの覚醒に思考が追い付かず
ビックリしている優姫の顔を見つめ呼吸を整える。


『あ・・ごめ』


優姫はビックリして零に掴まれた手を引っ込め
パタパタとリビングを出て行く。


『はぁ』


零は大きな溜息をつくとばふッと言う音と共に再度ソファに横になった。

(夢・・を見ていたんだろうか。)

目を閉じ 先程までいた世界の壱縷の朧げな姿を思い浮かべる。

そして不意に頭に残る柔らかな感触を思い出した。

(あの子がずっと?)

零はその感触を思い出す様に頭に手を当て身を起こした。
懐かしい温もりだった。






 


零はテーブルの本を何冊か持つと部屋に戻ろうとリビングのドアを開けた。
そこにパタパタと毛布とタオルを抱えた優姫が翔けてきた。


『あ 風邪・・ひいちゃうから・・』


優姫は毛布をギュッと抱きしめる。
零は目を丸くした。


『・・・ありがとう』


素直に言葉が出ていた。
優姫は上から降ってきた声に顔を上げ
零の顔をジッと見つめた。
大きな瞳に食い入る様に見つめられ零は少し眉を寄せる。


『・・・俺の顔に何かついてるか?』


優姫は首をふるふると振ると少し俯いた。
零はそんな優姫の目線まで膝を折ると優姫の頭に手を乗せる。


『じゃあ・・何か言いたい事でも?』


優姫は顔を上げると零の首に持ってきたタオルをふわりかけた。


『さっき汗かいてたから』


そしてそのまま首を拭いてあげると零の薄紫色の瞳と目があった。
間近で見る零の綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。

優姫はハッと頬を朱く染めると逃げる様に部屋に戻ってしまった。
残された零は首に掛かったタオルを掴むと優姫が消えて行った方を見る。

何だかくすぐったい想いが胸の中に残った。











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続きます。

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